自然妊娠をお望みの方へ
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、卵管の通過障害を改善することを目的とした手術です。
子宮卵管造影検査で、卵管が狭い場合や閉塞(通過していない)と診断された方のうち、体外受精ではなく、タイミング療法や人工授精などの自然妊娠を希望している方に有効な治療です。
卵管の中を観察しながらバルーンというプラスチックでできたチューブを通すことで、通過障害のある部位を押し広げ開通させます。
最後に卵管鏡を使い卵管内腔を観察して通過状況を確認します。
卵管鏡下卵菅形成術(FT)法の特徴
1. 開腹手術ではないため身体への負担が少ない治療法
- 子宮側からカテーテルを挿入する低侵襲治療
- 軽い麻酔・短時間の手術
- 身体の傷がつかない
2.自然妊娠が期待できる
- 高い卵管通過性の回復効果
- 妊娠率は平均30~35%といわれています。
※ 出典:「わが国における生殖補助医療の実態とその在り方に関する研究(1999年)」「産科と婦人科vol.63 No1(1996年)」
※ 妊娠に至らない場合は体外受精へのステップアップを考慮します。
3. 1泊の入院で帰宅可能
- 麻酔は軽い静脈注射で行うため翌日には帰宅可能です
※ 卵管周囲癒着が疑われたり、閉塞部位によっては、FTの適応とならない場合があります。
4. 健康保険が適用される(高額医療費制度のご案内を参照)
- 高額医療助成の対象の治療です
※ 「限界額適用認定証」を申請・取得すれば、病院窓口でのお支払いはあらかじめ減免されます。 - 生命保険の支払対象は「手術」
※ 各保険会社の規定をご確認ください。
DOUBLE SCOPE法の採用

(図1)
卵管鏡下卵管形成術(FT)で最も大切で時間のかかるプロセスが「卵管口を見つけ出すこと」です。
卵管口を探すのに時間がかかったり、誤認して卵管に「はいったつもり」になったり、子宮内を見ているだけのこともあります。(図1)

(図2)
卵管鏡は細いので、見える範囲が限られ、ピントも合いにくく、画像も悪いため、広い子宮内から卵管口を探すことは困難。
一方、子宮鏡は子宮内を鮮明に観察することができ、卵管口もすぐに見つけることができます。
この子宮鏡と卵管鏡を組み合わせることで、短時間で安全に卵管口を見つけ出し、卵管形成術を行うことが可能となります。(図2)
当クリニックは、麻酔専任の医師がつき卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うため、安全で確実で痛みのない手術が可能となります。
「卵管鏡下卵管形成術(FT)」法の流れ

細い卵管鏡を内蔵したカテーテルを膣から子宮へと挿入し、卵管口へ近づけます。

卵管口から、カテーテル先端に取り付けた弾力と伸縮性がある加圧されたバルーンを、押し廻しながら卵管のなかへ進めていきます。

卵管をバルーンで押し進めることで、卵管内の詰まりや癒着部分を拡げます。

カテーテルを卵管の端まで押し進め、開通後、バルーン中央に内蔵されている卵管鏡(外径0.6ミリ)をカテーテルと一緒に引き戻しながら通過性を回復した卵管内腔を連続的に細かく観察します。
卵管鏡での観察の利点
1.卵管内腔全域の観察ができる
2.卵管内腔の癒着や病変の部位などが評価できる
3.卵管のひだ構造の観察ができる
4.炎症所見や拡張など、病態の観察ができる
※軽い腹痛や出血、発熱があることがあります。
※まれに穿孔を起こす場合がありますが、通常は経過観察のみで自然快癒します。
※腹腔内に出血をおこすことが稀にあります。
※麻酔の副作用で吐き気やふらつきがあることがあります。
高額療養費制度のご案内
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、高額療養費制度の対象となりますので、ご希望される方は、ご自身で手続きをお願いいたします。
事前に認定証をご提示いただければ、窓口でのお支払は自己負担額限度額までとなります。
(注:自己負担限度額は、個人の所得額に応じて異なります。)
所得区分(標準報酬) | 自己負担限度額(目安) |
83万円以上/月額 | 約26万円 |
53万円~79万円/月額 | 約17万円 |
28万円~50万円/月額 | 約9万円 |
26万円以下/月額 | 約6万円 |
住民税非課税者等 | 約3.6万円 |
認定書のご提示がない場合
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、高額療養費制度の対象と
手術当日までに認定証のご提示がなかった場合は、窓口にて自己負担分の治療費を全額お支払い頂きます。
その後、「療養費の申請」をしていただきますと、自己負担限度額との差額が、後日、ご加入の医療保険の保険者より支給されます。
治療内容 | 窓口お支払い額 |
片側治療 | 約14万円(健康保険3割負担) |
両側治療 | 約28万円(健康保険3割負担) |
認定書交付の申請方法
ご自身が加入している公的医療保険(健康保険組合・国民健康保険等)に、「高額療養費の支給申請書」を提出、
または郵送にて認定書の交付を申請して下さい。
※ 医療保険の種類につきましては、保険証の表面にてご確認下さい。